班長は面倒だった。それでも地震の日、近所の人の顔が浮かんだ

はじめに

前の記事で、町内会の班長がいかに面倒かを洗いざらい書きました。集金で土日は潰れるし、役員でもない古株に叱られるし、爺さん婆さんの話は長いし、運動会の選手は集まらない。これは全部本当です。数年前の私の実体験です。

批判ばっかりになってしまうと愚痴ノートになってしまうので、今日はその続きを書きます。町内会の面倒くささにも意味がある、そう感じた話です。

元日の地震

私が班長をしていた年の元日、能登半島で大きな地震がありました。私の住む地域も長く、強く揺れました。

【家長メモ】
地震の瞬間は自宅の自室に一人でいました。妻と子供は外出先から帰る車の中でした。あの地震は本震の少し前に前震があったので、テレビをつけて情報を確認してたら、再び緊急地震速報のアラームが!うずくまりながらどんどん強くなる揺れに耐えていました。地震が収まってから、家族が無事に帰ってきたのを見て本当に安心しました。

先に正直に書いておくと、私は班長として見回りをしたわけではありません。防災訓練の旗を振ったわけでもない。班長としての「防災活動」は、実質何もしていません。津波警報が出て避難している上司の指示で、代わりに職場の様子を見に行っていました。

それでも、揺れが収まった後、頭に浮かんだものがありました。顔です。あのお宅のお婆ちゃん、無事だろうか。あの家は確か、平日は息子さんが来られない。角の家は小さい子が二人いたはず——名簿の文字列ではなく、玄関先で会話した顔が浮かびました。

班長を引き受ける前の私に、これはできませんでした。同じ班に誰が住んでいるか、正直ほとんど知らなかったからです。1年間の集金と回覧板が、面倒くささと引き換えに、私の頭の中に「顔付きの地図」を作っていたのです。

12月の「無駄な仕事」が1月に意味を変えた

もう一つ、皮肉な話があります。地震のわずか数週間前、私は班長の仕事として世帯調査をやっていました。転入・転出・出生・死亡による会員の増減管理。正直、「これ、何の意味があるんだ」と思いながら回った仕事です。

元日以降、あの調査の意味が変わりました。どの家に、何人、どんな構成で住んでいるか——災害のとき、この情報の価値は名簿の見た目からは想像できないほど大きい。安否確認とは、つまるところ「いるはずの人が、いるか」の確認です。「いるはず」を知らなければ、確認のしようがありません。

私が本当に書きたいのはここから:子供だけで家にいるとき

ここまでは班長の話でした。ここからは、親としての話です。

災害は、親が家にいるときに来てくれるとは限りません。共働きなら、子供だけで留守番している時間帯は必ずあります。そのとき子供が頼れるのは、スマホの向こうの親ではなく、歩いて30秒の距離にいる近所の大人たちです。

避難が必要な場面で、子供が「隣の○○さん」の顔を知っていて、向こうもうちの子の顔を知っている。爺さん婆さんと呼ぶには失礼なほど元気なご近所の方々と一緒に避難できるなら、それは子供にとって最も現実的な安全網です。逆に、お互いに顔も知らなければ、非常時にいきなり信頼関係は生まれません。

だから、私の結論はこうなります。

同じ班に誰が住んでいて、どんな人か。それを把握しておくのは、面倒くさくても、子を持つ親の仕事のうちだ。

町内会が好きになったわけではありません。祭りのご祝儀集めは今でも理不尽だと思っています。ただ、「面倒だからやらない」と「面倒だがこれだけはやる」の線を、どこに引くか。

私はその線を「顔と名前の把握」に引くことにしました。

班長をやらない人のための、最低限の代替案

班長が回ってくるのを待つ必要はありません。1年間の経験を通じて「結果的に」得たものは、短くまとめて次の3つです。

  1. 回覧板を手渡しする。ポスト投函をやめて、在宅していそうな時間に1軒だけ手で渡す。月1回、これだけで顔は繋がっていきます
  2. 子供と一緒に地域の行事に1つだけ出る。全部でなくていいです。清掃でも祭りでもいい。目的は行事ではなく、子供の顔を近所に覚えてもらうことです
  3. わが家の「頼れる家マップ」を家族で共有する。子供だけのとき、どの家に駆け込んでいいか。玄関の内側に貼ったり、冷蔵庫や壁とか目に付く場所に貼っておく

3つとも、町内会に入っていなくてもできることです。町内会の行事やその存在の是非と、近所に顔を作ることは、切り離して考えていい問題です。

まとめ

  • 班長の面倒くささと理不尽さ、それは全部事実
  • でも元日の地震で、近所の人たちの顔が浮かんだ
  • 子供だけの在宅時、最も現実的な安全網は近所の大人。顔の把握は親の仕事のうち
  • 班長をやらなくても、手渡し・行事1つ・頼れる家マップで代替できる

災害への備えというと、備蓄品のリストから入りがちです。それも大事なので別の記事に書きますが(→内部リンク予定:防災備蓄記事)、水や電池と違って、ご近所との関係性だけは災害が起きてからでは手に入りません。備蓄でいちばん手っ取り早くて大切なのは、実は人間関係かもしれない、というのが班長を1年やってみての結論です。

令和の家長

宅地建物取引士 / 富山県在住 / 町内会班長 経験あり

富山で家を持ち、子を育て、班長も回ってきた宅建士。誰も教えてくれないのに、やらなければならない家の実務を、自分で調べて失敗した順に書いています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました